久々に実家に帰ると、父がバッハの無伴奏チェロ組曲の楽譜を出してきて、第5番のページを開いた。特に変わったところはなく、第5番といえば一番音の高いA弦を1音下のGに下げるところが特徴的なので、そこを指摘した。すると父は、「それが問題の部分なのだが、音符をそのまま弾くと曲にならない。弦は1音下がっているが記譜は押さえる部分の音程になっている。」と、楽譜を追いながら説明した。要するに、移調楽器のように、例えばBフラットのクラリネットでドの音を出したいときはレで記譜するのと同じ感覚だ。低い方から3弦は実音なのに4弦目のみ記譜音というのは混乱しそうなものだが。自分でも別の版の譜面を持っていたのを思い出し、今確認のために開いたら、しっかり英語で説明書きがされていた。ちなみに、ギターはよく低い方のE弦を1音下のDに下げるが、記譜は実音だ。父もギターを弾くので余計に引っ掛かったのだろう。
そういえば、僕が京都時代に活動していた細胞文学の相方黒田も昔そんなことを言っていた。ただ、その頃の僕は移調楽器の存在を知らなかったので、全く理解していなかった。あの時このことを言っていたのか。