その半年くらい前、その友人と飲み歩いていた数軒目、店は満席だった。僕らの後ろに同じ年頃の男が同じく断られる。少し悩んだ末、数日前に僕が迷惑をかけた店に向かい、階段を上りつつ見上げればさっきの男。これも縁だと、共に飲み始める。
それから半年後、その彼を交えてバンドをしようという運びになった。楽器ができるかは問題ではない。コンセプトは「無理やり共感覚」。或るテーマから受けた別の印象によってフレーズを導き出すというもの。
その話を別の友人に話すと、トランペットで参加しますと言う。断る理由もないし、色々な方向から人が集まってひとつのことを達成するのは緊張感があっていい。そして共通の友人の一人を勝手にメンバーにする。
そして集まった5人。メンバーの一人が経営するカフェで顔合わせ。そこで担当楽器を決める。触ったこともない楽器が並び、それぞれが思い思いに音を出し、気に入った楽器を選んだ。楽器演奏をほとんど(全く?)してこなかった一人が、担当楽器が決まったとき、「ところで、この楽器の名前はなんですか?」と聞いたとき、このバンドのための初めのフレーズの形が僕のまぶたの裏に焼き付いた。