2015年1月23日金曜日

追憶、アメリカ7

現地で手に入れるつもりだったので、ギターは持って行かなかった。ギター大国アメリカ、ギターがないはずはない。だが、LAは不発(サンタモニカで見つけた唯一「おやっ」と思ったイタリア製のビザールっぽいギターは、弦高が多摩湖から見た富士山より高い)、NYCに期待するも、本命のウィリアムズバーグの店には、タイミングが合わなかったのか、まったくそそらないフェンダーのちょっと古いやつがちらほら。その店に向かう途中、フェンダーの純正ハードケースをゴミ捨て場で発見、中にパステルカラーのストラトが入ってることを期待し飛びかかるも、カラ。結局滞在中のライブは借りもののレスポールスペシャル(本当に素晴らしいギターでした)で凌ぐ。その借りもののギターのノブが、借りている間にグリグリまわしていると、ノブの真ん中ら辺から横に二つに割れてしまった。借りている手前、取り替えて返そうと思い、ライブ最終日のリハーサル前に楽器屋に立ち寄り、ノブが欲しいと告げると、店員の若者は店の奥に消えた。待っている間、店内の楽器を物色すると、そこには出発前に想像していたギターが溢れているではないか。絶妙にチープ、500ドル以下がほとんど。何色と表現していいか分からないような、はっきり言って変な色のかっこいいギターたちが静かに並んでいた。

追憶、アメリカ6

コーヒーは飲むという行為で完結している。美味いかどうかはだいぶ後の話だ。美味くなくても面白いし、その逆も然り。コーヒーが身近なのは助かる。助かった。

2015年1月17日土曜日

追憶、アメリカ5

JFK空港からNYに住む今から始めて会う友人(今から改めて友人になる友人)の家の最寄り駅に地下鉄で向かう。到着するも友人のアパートには辿り着けず、wi-fiを探し地下鉄の駅付近を徘徊する。駅を上がったところに待合室らしき場所を発見、電波もある。そこから友人に居場所を伝える。待てども来ない。数十分経ったときに初めて自分を疑った。外に出て建物の先端をを見上げると、どうやら病院らしい。仕切り直して友人に連絡、目印を伝えて外に出ると楽器を肩に抱えた人影が二つ、夜は始まったばかり。

追憶、アメリカ4

紆余曲折あってようやく辿り着いたダウンタウン、よく分からないが異様に落ち着く。電波を見つけて友人に連絡。空だけはそんなに変わらんだろうと見上げてみる。霞んでいる。僕の眼が汚れていたのだろうか、それとも寝不足のせいか。これから何をするかぼんやり考えながらコーヒーを、唯一現実的なコーヒーを飲みつつ、見慣れない雑踏を眺める。

追憶、アメリカ3

二度目のグリーンラインの駅、名は忘れたが、ホームは地上6メートルほどにあり、広いエレベーターを使って上がる。二度目は油断している。ただそれを実感していることで警戒している。一度目の恐怖は自分が欲していたものなのだろう。刺激を求めていた。刺激は自分次第だ。

追憶、アメリカ2

友人Kは、公園に差し掛かろうとしたとき「公園が好きなんだ」とひとりごちた。それは自然と出た言葉らしく、会話特有の重量感(対人故気を使うことで起こる)はなく、自然と出た言葉に感じた。公園をうろつきベンチに座り日は暮れかけなんでもない木々を見つめ刹那的に喋る会話に質感はない。

追憶、アメリカ

空港の売店で買ったピスタチオを空港のロビーでひたすら食べる。殻を割り、殻の半分に残った種子を口で掬い上げる。たまに吹っ飛ぶ。拾って食べる。殻の残骸が袋の中でしゃらしゃら鳴っている。飛行機はまだしばらく来ない。
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