2015年11月28日土曜日

考える日6

CDは、何事もなければ今日の夕方、レコード発売記念ライブの初日に完成する。こんなにぎりぎりまでしつこく物を作ったのは初めてで、これからの基準になると思っている。
ぼくはここ数年、考えることが先ず音楽を、芸術を、多くの表現を、そして人間を生かしていくことだと思っている。当たり前のことのようだが、そうでもないと感じる場面に向き合うことが多い。
全ては説明されていないし、説明することは出来ない。考えた過程の塊が答えと呼ばれているだけだと思う。答えより考えた過程が面白い。そして、まだ考える余白は残されているのだ。

2015年11月15日日曜日

考える日5

録音から半年弱、幾つかの自主企画やバンドの結成、コクテイル書房の定休日を借りてのバルの営業、たくさんの演奏などを経たことで、表現に対する気持ちに変化があったのだと思う。特に三村京子さんの作品への参加、彼女との会話は、自分自身に向き合うとても大きなきっかけになった。本当に感謝している。

10月28日から録音を始め、それからほぼ毎日11月9日まで録音を続けた。完璧とは言い難いが、今の自分に出来ることは出し切った。それからミックス、マスタリングを徹夜でこなした。デッドラインは11月11日だった。

考える日4

録音は初夏に済んでいた。その頃は、なんとなくCDでも出そうかなというくらいのぼんやりとした気持だった。実際出そうと決意したときには、その録音は既に色褪せていた。目的を持たずに録音した作品も悪くはないが、今の自分には合わなかったらしい。

夏の去り際、名古屋でのライブが決まった。それから少ししてCDを出すことを決め、流れで名古屋のライブをレコ発にしようということになった。そして立て続けに金沢、京都とライブが決まる。
録音も終わっているし、あとはパッケージをどうするかだけだと思っていたのだが、いざ久々に過去の録音を聴いてみると心に響かない。この時点でレコ発の一月前だった。

2015年11月13日金曜日

考える日3

紙のことで、盤のことは遠い昔に打ち捨てられていた。これはたった二日間の出来事。
その夜、プレス会社からメールが。「色指定に不備があります。PANTONEからDICへの変更を願います」という旨。前途の横文字は色見本のようなもので、前者はヨーロッパ、後者は日本の規格。CDの色を決めた時点では紙の色は未知だったので、なんとなく決めた好きな色合いで入稿した。一目惚れした紙とCDの色は全く噛み合わない。早速、昼間決めた動物的黒色に寄り添った盤面になるよう、指定した。

考える日2

盤は数日前に入稿。本日、ジャケットの打ち合わせに、先日飛び込みで連絡した足立区に作業場を構える活版印刷の会社へ。赤羽からバスで東へ向かう。工場は広々としていてアトリエの様。側転を何回か出来る広さ。挨拶を済ませ、早速本題へ。紙選びの段階で提示された新商品の台紙に一目惚れした。優しい動物的な少し青味を帯びたような黒。値は張るが、結局それに決めた。その後も活版の情熱と可能性についてサンプルを参考にしつつ談笑、時間が来て店を後にした。

考える日1

歌曲集の録音物を発表します。要はCDを出します。数年ぶりに、録音から発注からなにからなにまで自力で引きずりながら進めてます。その中で感じたことは、随分往生際が悪くなったなーということです。

2015年11月5日木曜日

発、そのもの2

終演後、植野さんを囲んで談笑、輪の中がミュージシャンばかりだったことから、植野さんが自己紹介がてら二曲ずつ披露しようと強引な提案、ギターに一番近かった僕から第三幕が上がる。最近の得意な曲と少し昔の僕らしい曲を。続いて第二幕でさやさんと共に客席で歌っていた方、蓋を開ければ池間由布子さんだった。カバーを一曲、オリジナル一曲を披露。静かな中に鋭さを持った言葉が独特の声色に乗ってぼろぼろとこぼれる。続いて紹介されたのが神田さやかさん。幽かな歌声だが言葉がすっと近づいてくる。すっと近づいたかと思うと目の前で落ちたり、消えたり。そして、テニスコーツさやさん。ニコニコしながら発せられる音楽が、ずっしりとステージにもなった小上がりに積み重ねられていく。本編の影響からか、音と言葉、心が物質的にあたり一面に散らかる。美しい邂逅、その他にも嬉しい出会いが。

発、そのもの1

不思議な緊張感に包まれた第一ステージ。新曲を中心に構成されている事が事前に公表されていたためか、息をのむような演者と観客のやり取り。もはや「エロ本」という言葉でさえ、深読みの対象になっていた。厳格な様相で第一幕は下りる。
15分程度の間を持って第二ステージ、いい具合に解れた雰囲気(演者本人がビール小瓶を立て続けに2本)で走り出す。序盤で客席のテニスコーツのさやさんがゲストとして呼ばれるが、本人の意向から客席から離れずに共演が始まる。その距離は3メートルほど。二人の声が物質のようにコクテイル書房の空間を走り回っていた。その後、さやさんの近くに座っていた馴染みのお客さんも加わり、既に植野さんの遊び場と化していた。
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