2012年9月14日金曜日

東北に付いて行く8

あっという間に最終日だが、初日が随分前の事のように感じる。花巻をゆっくり観光する。先ず、温泉から近い高村山荘へ。高村光太郎の記念館である。目的地までの道のりは、氏が何を住まいに求めていたかを訴えるような静かな、美しい田舎の風景が残っていた。それから花巻といえば宮沢賢治ということで記念館へ。特筆すべき事なし。情報としては素晴らしいのだろう。それから眼鏡橋、イギリス海岸と流れる。旅は終りに向かっている。初めからそうなのだが。高速に乗って仙台へ。空がじわじわ姿を変えて行く。あまりにも空が広く夕焼けが幻想的なので、パーキングで堪能する。仙台に近づくにつれ車が増えてくる。車の返却が迫っていて気を揉んだが、初日に行ったラーメン屋に寄り、友人は友人と再開し、車も時間内に返却し、安堵した所で疲れがやってきた。旅の最後は、歩き回った挙句、目の前に現れた牛タン屋で牛タンを食べて幕を閉じた。

2012年9月13日木曜日

東北に付いて行く7

遠野の田舎道を抜け、一行は花巻の温泉宿へ向かう。友人の予定通り夕暮れ前に到着した。古びた、情緒ある温泉宿である。旅館の人に温泉の案内をされつつ部屋に向かう途中、廊下から「あれがお客様の部屋になります」と指差した先には、正しい温泉宿の正しい部屋が鎮座していた(三階です)。部屋の襖を開けると、常日頃友人と「こんなところで創作に耽りたいよな」と話していたような部屋だった。あまりにも理想的なので、旅館中の人を集めてこの宿を選んだ友人を胴上げしたいぐらいだった。浴衣に着替え、温泉を楽しむ。静かに日が暮れて行く。

2012年9月11日火曜日

東北に付いて行く6

被災地を巡る。この旅のはっきりした共通の目的である。海岸沿いをゆっくりと静かな気持ちで、時に観光地を歩き、移動した。元々ある風景を知らないので、震災の傷跡を幾つも見逃したとは思うが、それでも衝撃的な光景を幾つも見た。特別な印象を持ったのは陸前高田だった。ナビには、何もない所にスーパーや踏切やその他の施設の情報がそのまま残っていた。一周してナビに設定した目的地、陸前高田駅への一本道に辿り着いたとき、「目的地まで~メートルです」というナビの声が不気味だった。目の前には何もない。

2012年9月8日土曜日

東北に付いて行く5

二日目は車(レンタカー)で移動。僕は運転しないので、喋っているだけだ。「付いて行く」冥利に尽きる。思いのほか二人とも寝覚めが良く、レンタカーを借りるまでの時間を持て余したので、道中不動産物件などを物色し、土地の雰囲気を堪能する。そして車は発進するのだった。

2012年9月7日金曜日

東北に付いて行く4

旅は酒を誘うのだ。飲み屋へ向かう。海産物が売りの飲み屋で銘酒を楽しむ。続いて寿司屋にハシゴし、銘酒を楽しむ。酒に引っ張られるように飲んでしまった。いや、酒を引っ張っていたのか。字数にして分厚い本になるくらい皆よく喋った。

2012年9月6日木曜日

東北に付いて行く3

喫茶らしい喫茶があったので入る。直ぐ出る。仙台で働く共通の友人と合流し、もう一軒。ちょっとした路地が東京の下町を思い起こさせる。黄色がかったフィルターを通して見るような、もやっとした古びた飲み屋街を通り抜け、鉄のような一角を抜け、喫茶ではない、カフェに入る。コーヒーは闇のような深煎り、しかし重くない。

2012年9月4日火曜日

東北に付いて行く2

僕は方向感覚より思い込みの方が強いので、東西南北は気まぐれに変わって行く。北のつもりで西に歩いていたりするから常に街は新鮮だ。炎天下、点在する日陰を通る度、東北の風が体温を微かに下げるが、随分天気の良い時分に東北に来たようでイメージしていたより暑い。代謝の良い友人は派手に汗を流していた。友人の友人が働くラーメン屋に行ったが、不在(サプライズ故)で会えず、コーヒーを飲みに中心街に向かう。

2012年9月3日月曜日

東北に付いて行く1

友人に誘われ、東北に付いて行った。「付いて行った」というのは、計画は全て友人のもので、僕はこの旅のマスコット的存在とでも言おうか。高速バスに乗って仙台へ。仙台には去年も来たが、その時は北から入ったので、同じ街だが別の街に来たみたいだ。ぼんやりとした記憶の中、友人の影の如く、泥棒のような足取りで付いて行く。
©野鳥入門 All rights reserved.