2017年11月7日火曜日

Fender Musicmaster '76

およそ20年前、季節は秋から冬、ちょうど今くらいの季節だったと思う。お茶の水にあるカザルスホールのエントランスで、楽器のセールが催されていた。当時、僕はペイヴメントやべック、K Recordsのバンドが好きだったので、そんな彼らが愛用していたFenderのギター、特にMustangやJazzmasterのような、少し歪なギターが欲しかった。しかし、それらは高価で、予算を上回るものばかりだった。その内に本体より値札ばかりを眼で追うようになり、少しすると、手ごろな、しかもUSA製のヴィンテージギターの値札に辿り着く。'76年製、ボディーはMustangと同じ形、色は黄ばんだホワイト、そしてピックアップがフロントのみでアームなし、名はMusicmaster。人と違うもの所有することが個性だと勘違いしていた初心な青年は、即座にそれを購入するのだった(値段が強く背を押した)。

数日前、我が愛器は、ピックアップを換え、乾燥しきっていた指板にオイルを塗り込み、全体を綺麗に磨かれたことで、眠りから覚める。数年悩まされた雑音は、ピックアップが原因と分かっていたが、換えられずにいた。音色が変わってしまうことを危惧したためだ。しかし、そもそも本来の音とはなんなんだろうか。そんなことより気持ちよく弾けた方が楽器としては幸せなのではないか。そんなことを考えているうちに僕は、半ば無意識にネットでピックアップを物色していたのであった。

2017年9月28日木曜日

Clear Soup

作品は、触れる人によって姿を変える。なにが描かれているかは、その作品に向き合った人が決めれば良い。そして決まらなくても良い。そこに至るまでどれだけ遊べるかが大事だ。作者が描いたものと違うものが存在しているかもしれない。それはこの先も未だ変わるかもしれないし、元の場所に帰ってくるかもしれない。
ピカソの話で、画商が、描かれたものを当てたがるのにうんざりした、というのがあった。実際描かれているものより、そこから発せられるものを個々が自由に受け取れば良いのではないだろうか。

河合真里さんの個展「Clear Soup」で、作品に寄せた即興演奏をした。演奏場所に近いところに掛けられていた、夜明けの空気を通して見る未だ夜の空の色をした部屋に置かれたボウルに、さらさらの液体が張られた絵の底の方の気配から音を出し始めると、その絵の隣に掛けられていた三点の静物のひとつの、中心がくびれた野菜のような鉄アレイが、その重さを無視してボウルの底からゆっくりと水面に向かって浮き上がってくる。水面に触れようとするところで何故か心が引き戻される。約二時間の演奏はほとんどその繰り返しだったように思える。

傾向

たまに過去の作品を聴き直す。面白いことに、一番最近の「考える日」が最も荒く、緊張感がある。他の作品にはどこか慣れのような雰囲気を感じる。「考える日」が、出来るか分からないことにあえて挑戦したのに対し、他の作品は、出来ることの中で最善を尽くすやり方だったからだろうか。

2017年9月22日金曜日

待つ

録音しようと思っている作品群がある。「わたしの死」という名にするつもりだ。しかし、気がそっぽ向いている。前作「考える日」の時のような、気持ちが走っているような感覚がない。録音し始めたら動き始めるのかもしれないが、どうにも腰が重いのだ。自然と録音を始めるときを待つ。

再構築

録音物として発表の機会がなく、ほったらかしになっている楽曲を引っ張り出してみる。古いものは15年くらい前の作品だ。毎回そのまま元の場所に戻すことになるのは、ただ懐かしく当時の方法で演奏するからだろう。今回は、楽曲の要素を分解、分析し、組み直してみることにした。
いくつかの和音群に旋律を乗せ、最後に歌詞を乗せる方法を使って作曲していた頃の作品なので、旋律の動きと歌詞の結びつきが緩い。旋律を一度楽譜に起こし、歌詞との関係を確認する。旋律が持つリズムの形を抜き出し、シンコペーションの位置を探る。和音の組み合わせを旋律から導き出す。不自然にならぬよう気を付けながら。

2017年8月1日火曜日

音を見る 2/2

第1回で受けた授業を土台にメロディーを作って来てもらい、それを講師が楽譜に起こし、視覚化。実際自分が書いたメロディーがどういうものなのか知ってもらいます。(募集締め切っています。)

2017年7月20日木曜日

音を見る 1/2

全く作曲に触れたことがない人でも、適当なメロディーを口ずさんだことはあるのでは?それは立派な作曲です。
シンプルなメロディーを題材にして、色々な角度から分析し、作曲のしくみを紐解いていきます。そこから見出した方法を使い、実際にメロディーを考え、楽譜に起こして視覚化、最後に演奏します。

第1回は、作曲のしくみを知って、メロディーを作る準備をします。

斉藤友秋作曲WS「音を見る」(全2回)
小台ブリュッケにて
第1回 7/21(金)
第2回 8/4(金)
19時半から1時間半程度
参加費 3000円(2回分・別途ご注文下さい)

2017年1月27日金曜日

コーヒー散歩の帰り

ひとつの産地に特化して国から国へと8カ国散歩したところで終わり。後半は散歩の趣旨が少しずつ横にそれて、それはそれで楽しい道のりだったが、帰ろう。
ブリュッケ店主杉浦さんの視点は広い。次から次と興味があることに飛び込んで行く。かといって浅瀬を漂っているわけではなく(そこまでの場合も多々ありそうだが)深く潜って興味を満たし、新たな興味を水揚げする。
彼の興味、欲求がコーヒーを丸裸にし、その奥に隠されていたコーヒーの本来の姿が表出される。それは必ずしも美しい感動ではなく、故に美しい感動が存在するのだろう。たしかに、関わった人たちは味わうという「行為」をしていた。
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