2012年12月20日木曜日

高円寺コクテイル

目をつぶっていても高円寺を歩けばここにたどり着く、筈はないが、気付けば開店前に行って「やっているか」と聞く前にビールを頼み、酒を飲み続け、日も越えて、帰るころにはライブでもという話になる。12月は30日、この文章は宣伝という一つの試みです。時間は、皆が飲み始める頃、酔った最中に取り決めた何かをここで上演します。今年の目的を果たすべく、人の力を借り、何かを演ります。連絡先を失くしました。一報下さい。

転ぶ

美しい落ち葉にタイヤを取られ青梅街道、阿佐ヶ谷の南辺りで自転車は転倒。黒いズボンとモモヒキは仲良く破れ、パンクスの聖地を前にして洗礼を受ける。

2012年10月13日土曜日

夜の前2

秋になって夕方のチャイムが変わった。以前書いたが、僕の住んでいる地区は市の境目故か、二つのメロディが同時に流れる。先ず、秋の定番「赤とんぼ」が流れ、秋が更に秋らしくなったところで一変、別のメロディが流れ出し、二つの関係のないメロディが合わさって、雅楽のような響きになり、このまま正月気分で不協和を免れるかと期待した矢先、二つのメロディは暗黒に向かって混ざりあうのだった。「赤とんぼ」が先に終わり、一方の曲だけになると、それが「七つの子」だという事が明らかになった。

2012年10月7日日曜日

ガラム

ふと、手元にあった文庫本を5冊重ねて手に持ち、背の部分を嗅ぐと、ガラムの匂いが仄かに香った。思い出す事はない。

2012年9月14日金曜日

東北に付いて行く8

あっという間に最終日だが、初日が随分前の事のように感じる。花巻をゆっくり観光する。先ず、温泉から近い高村山荘へ。高村光太郎の記念館である。目的地までの道のりは、氏が何を住まいに求めていたかを訴えるような静かな、美しい田舎の風景が残っていた。それから花巻といえば宮沢賢治ということで記念館へ。特筆すべき事なし。情報としては素晴らしいのだろう。それから眼鏡橋、イギリス海岸と流れる。旅は終りに向かっている。初めからそうなのだが。高速に乗って仙台へ。空がじわじわ姿を変えて行く。あまりにも空が広く夕焼けが幻想的なので、パーキングで堪能する。仙台に近づくにつれ車が増えてくる。車の返却が迫っていて気を揉んだが、初日に行ったラーメン屋に寄り、友人は友人と再開し、車も時間内に返却し、安堵した所で疲れがやってきた。旅の最後は、歩き回った挙句、目の前に現れた牛タン屋で牛タンを食べて幕を閉じた。

2012年9月13日木曜日

東北に付いて行く7

遠野の田舎道を抜け、一行は花巻の温泉宿へ向かう。友人の予定通り夕暮れ前に到着した。古びた、情緒ある温泉宿である。旅館の人に温泉の案内をされつつ部屋に向かう途中、廊下から「あれがお客様の部屋になります」と指差した先には、正しい温泉宿の正しい部屋が鎮座していた(三階です)。部屋の襖を開けると、常日頃友人と「こんなところで創作に耽りたいよな」と話していたような部屋だった。あまりにも理想的なので、旅館中の人を集めてこの宿を選んだ友人を胴上げしたいぐらいだった。浴衣に着替え、温泉を楽しむ。静かに日が暮れて行く。

2012年9月11日火曜日

東北に付いて行く6

被災地を巡る。この旅のはっきりした共通の目的である。海岸沿いをゆっくりと静かな気持ちで、時に観光地を歩き、移動した。元々ある風景を知らないので、震災の傷跡を幾つも見逃したとは思うが、それでも衝撃的な光景を幾つも見た。特別な印象を持ったのは陸前高田だった。ナビには、何もない所にスーパーや踏切やその他の施設の情報がそのまま残っていた。一周してナビに設定した目的地、陸前高田駅への一本道に辿り着いたとき、「目的地まで~メートルです」というナビの声が不気味だった。目の前には何もない。

2012年9月8日土曜日

東北に付いて行く5

二日目は車(レンタカー)で移動。僕は運転しないので、喋っているだけだ。「付いて行く」冥利に尽きる。思いのほか二人とも寝覚めが良く、レンタカーを借りるまでの時間を持て余したので、道中不動産物件などを物色し、土地の雰囲気を堪能する。そして車は発進するのだった。

2012年9月7日金曜日

東北に付いて行く4

旅は酒を誘うのだ。飲み屋へ向かう。海産物が売りの飲み屋で銘酒を楽しむ。続いて寿司屋にハシゴし、銘酒を楽しむ。酒に引っ張られるように飲んでしまった。いや、酒を引っ張っていたのか。字数にして分厚い本になるくらい皆よく喋った。

2012年9月6日木曜日

東北に付いて行く3

喫茶らしい喫茶があったので入る。直ぐ出る。仙台で働く共通の友人と合流し、もう一軒。ちょっとした路地が東京の下町を思い起こさせる。黄色がかったフィルターを通して見るような、もやっとした古びた飲み屋街を通り抜け、鉄のような一角を抜け、喫茶ではない、カフェに入る。コーヒーは闇のような深煎り、しかし重くない。

2012年9月4日火曜日

東北に付いて行く2

僕は方向感覚より思い込みの方が強いので、東西南北は気まぐれに変わって行く。北のつもりで西に歩いていたりするから常に街は新鮮だ。炎天下、点在する日陰を通る度、東北の風が体温を微かに下げるが、随分天気の良い時分に東北に来たようでイメージしていたより暑い。代謝の良い友人は派手に汗を流していた。友人の友人が働くラーメン屋に行ったが、不在(サプライズ故)で会えず、コーヒーを飲みに中心街に向かう。

2012年9月3日月曜日

東北に付いて行く1

友人に誘われ、東北に付いて行った。「付いて行った」というのは、計画は全て友人のもので、僕はこの旅のマスコット的存在とでも言おうか。高速バスに乗って仙台へ。仙台には去年も来たが、その時は北から入ったので、同じ街だが別の街に来たみたいだ。ぼんやりとした記憶の中、友人の影の如く、泥棒のような足取りで付いて行く。

2012年8月10日金曜日

マイナーボーイ

「メジャーボーイ」というハーモニカ(ブルースハープ)がある。ハーモニカを扱ってる楽器屋には大抵置いてあるメジャーなハーモニカである。「メジャーボーイ」のメジャーは長調の事である。読者は「マイナーボーイ」を知っているだろうか?
父親が恐らくフォークブームの時に買ったハーモニカが実家には数個あり、その中に「マイナーボーイ」が混ざっていた。長調も短調も知らないくらい小さい頃、吹くと明らかに他のと違う音階で暗い「マイナーボーイ」を僕は特別視した。それから数年後、ある程度音楽の構造が分かったころ「マイナーボーイ」の名に合点がいった。それからさらに数年、ある時友人らとハーモニカの話になって、そこで「マイナーボーイ」の話をすると、誰一人知らないので、自分の記憶を疑った。そしてさっき突然思い出し、ネットで調べたら普通に売っていた。でもマイナーには変わりない。

2012年7月19日木曜日

ラテンアメリカ

曲を書けなくなったのはコロンビアの作家のおかげ、再開したのはチリの作家のおかげで、今さっき観た映画はキューバ、先日まで家にあったコーヒー豆はエクアドルとメキシコ、さて今からコーヒーと思ったらコロンビアだ。

2012年7月14日土曜日

走り続ける女たち

僕を追い越した自転車に二人乗りした女の子たちは自転車屋の脇の駐車場で止まり「ご自由にご利用ください」と書かれた空の一斗缶に数本入っている空気入れを一本ずつ手に取り前輪と後輪に同時に空気を入れ始めた。

2012年7月13日金曜日

レコード

全て処分しようと思っていたが、その中でも特に思い入れが強かった、もしくは売りに行ったけど返されたレコードを最近夕飯の時に一枚ずつ聴いている。多分150枚くらいあって、150枚くらいだと選ぶのに丁度良い。聴きながら、誰と聴いたレコードか、どこで買ったレコードか、いくらだったか、などと思いを巡らしていると久しい友人から電話がかかってきた。

2012年7月11日水曜日

ジャングル風

炎天下ぼんやりしながらもっさりした緑地の脇を歩いていると鳥の声が耳に入った。ぼんやりしていたのでしばらく気に留めなかったが、注意して聞いてみるとジャングル風の鳴き声である。上を見上げるとはっきりとした緑色の鳥が叫んでいた。ウグイスではないと思う。

2012年7月8日日曜日

夜の前

僕の住んでいる街では夕方になると「椰子の実」が流れる。ここまでは曲が違えどどの街でも同じようなものだろう。しかし、曲が流れ出して30秒くらいすると、重ねて「エーデルワイス」が始まり暗黒な不協和音が街を包むのだ。市の境目だからだろうか。

2012年6月25日月曜日

新しいもの

畑に鳥除けのCDがぶら下がっているのはたまに見るが、近所の畑にはLDがぶら下がっている。LDの事をすっかり忘れている人のために分かりやすく説明すると、DVDの先祖で大きさはLP大である。LPの事をすっかり忘れている人のために(中略)
発見して10秒ほどは鳥の気持ちになったものだが、直ぐ慣れた。
新しいものは怖い、そして興味を引く。そして直ぐ慣れる。

2012年5月22日火曜日

レオンハルト

今年亡くなったそうだ。そうとは知らず最近ふと聴いたレオンハルトのゴルトベルク変奏曲は心に染みた。レオンハルトと聞けばクイケン兄弟を連想する人は少なくないだろう。今来日しているチェロのヴィーラント・クイケンのバッハ無伴奏のコンサートはあっという間に完売したらしい。そして音楽の捧げものを聴いてみる。友人はレオンハルトとクイケンの盤は解釈が正しくないと説明したが、そうだったとしても素晴らしいと思う。音楽はただその音楽を好きと思うかそうでないかだと思う。そしてマタイ受難曲を聴こうと思ったが音が飛ぶから売ったんだった。レオンハルト、一瞬でもいいから実際に聴いてみたかった。もう遅い。

2012年5月4日金曜日

響き

サイケデリックという言葉は魔法である。シュルレアリスムという言葉も魔法である。それは僕にとってだが。しかし、誰しもこういう体験があるのではないだろうか。言葉の響きだけで、内容も良く分からないまま虜になってしまうことが。その事を考え、発音するだけで特別な気分になる響きが。あとアバンギャルドも。

2012年3月28日水曜日

止まらないJB

不安だがさらに別の映像に進むと、いきなり絶叫、ガウンのようなものを脱ぎ捨て歌いだし感極まり膝がガクッ、コーラスの男が手を貸し脱ぎ捨てたガウンを着せ裏にはけようと促すが拒否、じわじわマイクに近づきガウン脱ぎ捨てバタバタしながら絶叫、感極まり膝ガクッ、ガウンを拾ったコーラスの男が、、どういう演出なのかわからんが、やっぱかっこいい。

もう二時半

うつらうつらしながらパソコンに向かっているとジェームス・ブラウンが歌っている。ライブ映像なのだが踊ってるだけの女やコーラスだけどほとんど踊ってる男やホーンだけど基本踊ってるやつら、ジェームス・ブラウンも踊ってる。映像を止めるとまるで時間が止まったようで不安になったので再び再生したらさらに不安になった。

2012年3月10日土曜日

銀座カンカン娘

先日、友人が働く喫茶店に喫茶しに行くと、入口付近に高峰秀子特集映画上映情報のパンフレットが目に付いたので手に取ってみると映画「銀座カンカン娘」。観たことはない。十数年前に活動していたバンドで銀座カンカン娘をカバーした。曲名であり、名曲である。忘れてばかりいる日常でまったく消え去ることのない銀座カンカン娘。当時の音楽は5%も思い出せないが、演奏した曲は忘れない。

2012年2月8日水曜日

視力

最近めっきり目が悪くなった。見えなくなると見ることに注目するようになる。目が良過ぎた所為か対象を大きく雑に捉えていたように思う。
昔、友人I君が、目がかなり悪いのにいつも裸眼でいるので何故眼鏡をかけないのか問うと、「見たいものなどない」と言っていたのをこの間思い出した。
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