2011年10月23日日曜日

E

La guitarreriaは僕がスペイン滞在中に弾くために買った中古の安物ギターの名前で、当初の予定では、荷物になるので帰る時に現地で売り払らおうと考えていたが、しばらく旅を共にしたことで愛着が湧き、結局連れて帰って来た。どんなギターかというと、穴から中を覗く(これは穴があいたギターの醍醐味である)と木材の接着面から糊がはみ出していて、製作時に目印として鉛筆で書いた印が残っていて、ラベルを一度はがしてまた貼り付けた痕跡が残っている。お土産のにおいがする(二つの意味で。実際お土産なのでは)。外側は、パッと見は問題はないが何となく雑さが感じ取れ、落ち着きがない。でもちゃんと単板で、音はでかい。帰国後、調子が悪くなって修理に持っていくと、「こんな重いギターは見たことがない」と店の人が驚いていた。確かにちょっと重い。値段は当時日本円で三万五千円くらいだったと思う。でもいいのだ。開き直っているのではない。持っていても愛着が湧くものとそうでないものがある。このギターは前者で、なにがそんなにいいかというと、気を使わないから。
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